星新一さんほどの作家になれば、その著作はSFファンのみならず、多くの一般読書家にも愛されています。没後企画された選集が、当初の予定を大幅に上回りながら次々と巻を増やし、増刷を繰り返していることが何よりもその証拠。読書習慣への入門として、教育現場で活用されている事実もあります。
本書では人物伝にからめながら、SFファン以外にはあまり知られていない、戦後日本SF史も的確に展開されてゆきます。主流文学から軽視されてきた日本のエンターテインメント文学の歴史が、これほどまでにSFファン以外の読者に開かれた形で書かれた本は、めったにないのではないかと思います。
そして本書が刊行された後、実際に星さんと交流があり現在もSF業界に身を置く方々にすら「(星さんのことを)ここまでは知らなかった」と言わしめたほどの緻密な取材力。遺族の方と深く関わり、大量の一次資料にあたる機会を得た強みがあったとはいえ、これは著者のノンフィクションライターとしての優れた構成力なしには、決して成し得なかった偉業でしょう。SF業界の外からの視点であったからこそ、フェアな立場で書けた部分もあると思います。私はこの点を大きく評価したいです。
最後に、もうひとつ。本書は、現役の作家(特に新人作家)と、作家という職業に憧れるすべての人に向けての道標となる書ではないかという気がしています。この本は「作家・星新一」という個人の生涯を追うと同時に、「作家とは何か」「人間とは何か」という普遍的な問いかけを次々と投げかけてきます。その鋭い問いかけには、しばしば胸が痛くなるほどの衝撃力があります。読み手がこれに共感するにせよ反発するにせよ、これほど真摯な書き方はないでしょう。
この本を読み終えたとき、星さんの作家として人生は果たして……と重い感想を抱く読者もいるかもしれません。しかし、苦悩を胸の奥底にしまい込み、生涯、たったひとりで小説を書き続けた星さんは、やはり「最後まできちんと闘い続けた人」ではないかと、私には思えて仕方がないのです。
少なくとも、私自身は、この本から大きな勇気を頂きました。
2007年度、最大級の収穫となる一冊であろうと思います。
本書では人物伝にからめながら、SFファン以外にはあまり知られていない、戦後日本SF史も的確に展開されてゆきます。主流文学から軽視されてきた日本のエンターテインメント文学の歴史が、これほどまでにSFファン以外の読者に開かれた形で書かれた本は、めったにないのではないかと思います。
そして本書が刊行された後、実際に星さんと交流があり現在もSF業界に身を置く方々にすら「(星さんのことを)ここまでは知らなかった」と言わしめたほどの緻密な取材力。遺族の方と深く関わり、大量の一次資料にあたる機会を得た強みがあったとはいえ、これは著者のノンフィクションライターとしての優れた構成力なしには、決して成し得なかった偉業でしょう。SF業界の外からの視点であったからこそ、フェアな立場で書けた部分もあると思います。私はこの点を大きく評価したいです。
最後に、もうひとつ。本書は、現役の作家(特に新人作家)と、作家という職業に憧れるすべての人に向けての道標となる書ではないかという気がしています。この本は「作家・星新一」という個人の生涯を追うと同時に、「作家とは何か」「人間とは何か」という普遍的な問いかけを次々と投げかけてきます。その鋭い問いかけには、しばしば胸が痛くなるほどの衝撃力があります。読み手がこれに共感するにせよ反発するにせよ、これほど真摯な書き方はないでしょう。
この本を読み終えたとき、星さんの作家として人生は果たして……と重い感想を抱く読者もいるかもしれません。しかし、苦悩を胸の奥底にしまい込み、生涯、たったひとりで小説を書き続けた星さんは、やはり「最後まできちんと闘い続けた人」ではないかと、私には思えて仕方がないのです。
少なくとも、私自身は、この本から大きな勇気を頂きました。
2007年度、最大級の収穫となる一冊であろうと思います。
この記事へのコメント
TBありがとうございました。まったく見事な評伝ですね。
私が星さんの作品から受け取るいちばんの要素は、大きな意味でのニヒリズムなのですが、友人の自殺や会社の番頭さんの裏切りなど、考えるヒントをいくつもいただきました。あと、我々が取り組むべき課題は、個々の作品の解析でしょうか。
私が星さんの作品から受け取るいちばんの要素は、大きな意味でのニヒリズムなのですが、友人の自殺や会社の番頭さんの裏切りなど、考えるヒントをいくつもいただきました。あと、我々が取り組むべき課題は、個々の作品の解析でしょうか。
2007/04/12(木) 20:05 | URL | 森下一仁#R63KSl6.
この本をきっかけに新たな証言も出てくるでしょうし、本格的な作品論も次々と出てくることを私も期待しています。いずれどなたかによって書かれるはずの、星さんと交流のあった他作家さんの評伝からも見えてくるものもあるでしょうし。すべてはまだ始まったばかりですね。
2007/04/13(金) 11:37 | URL | 上田早夕里#-
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