
なかなか読む時間が取れず、紹介が遅くなってしまいました。本作は刊行と同時に、あちこちで話題になっているようですね。
『ルドルフ・カイヨワの憂鬱』で第五回日本SF新人賞佳作を受賞した北國浩二さんの新作は、SFではなくミステリです。端正な文体や会話を丁寧に積み上げながら、じっくりと物語を展開してゆく作風は、ジャンルが違っても、この著者の作品に共通する特徴と言えるでしょう。
早老症という題材をめぐって描かれる登場人物たちの心情は、非常に切なく、また同時に激しく恐ろしいものです。著者は、デビュー作『ルドルフ・カイヨワの憂鬱』で生命倫理の問題を通して人類という種族そのものの罪業を描きましたが、本作では日常的な個人の罪業を描いています。読了後、結局、誰が一番罪深い人間であったのか?と問うとき、答は読者の数だけあるのでしょう。私には全員が罪人(つみびと)に思えました。作中に出てくるイルカの童話や、イルカと主人公の父親とのエピソードが作品のテーマを見事に集約しています。
読後の何ともいえない切なさ、やりきれなさは、東野圭吾さんの初期作品(『放課後』や『魔球』の頃の)に共通するものがあるように個人的には感じました。人間の罪業に対する冷静な考え方も、少し似ているかもしれません。
SFでデビューした著者が、この作品を通過した後にどういう方向へ進むのか、これから先が非常に楽しみです。
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